メッセージ
相対で商いを、長く続けていると数多の新しい出会いがあり、別れがあるのは周知のことである。
小生も例外になく、19年今の仕事に従事していると、数多のお客様と出会い、別れを経験してきた。
ここで、特定のお客様との商いのやりとり等を記すことは、閲覧していただいている方々には、大変失礼な事と承知しながら、記す今回の件をお許し頂きたい。
そのお客様からご贔屓にして頂いてから10年になる。
野鳥を主に撮られておられ、カメラは高速連射が可能なカメラ、レンズはF値が少なく、望遠系と世界のスポーツイベント等でよく見られる機材を好まれた。
特に新製品には敏感で、発売日には必ずお電話で予約、入荷の連絡を申し上げると数時間後には店頭にいらっしゃるという具合。
そんなやりとが、数十回、昨年の8月26日も、いつものように予約の電話を小生が受ける。
発売日は同年の年末、又お会い出来ると楽しみにしていたが、来春に延期。
そして本年の震災にて再度延期。
その度に“待ちますよ”との便りを頂いた。
本年の8月末の発売決定し、小生が入荷確定の案内を受けたのが、予約のお電話を頂いた日の丁度1年後の8月26日。
その手でお客様の携帯電話にご連絡したが、応答がない。
ご自宅にも、ご連絡応答がない。
お客様からの連絡を待ち続けて2ヶ月経った昨日、1人のお客様が片手に大きなレンズを抱えてご来店。
ふともう片方の手を見ると、小生が書いた受領書をお持ちになられていた。
小生も数本しか販売した事がないレンズ。
ご来店なされたお客様が言葉を発する前に察しがついた。
亡くなられたのである。それも発売日の数週間前に。
生前、小生が最後に販売したレンズを弊社に引き取って欲しいと親族の方にご依頼されたそうである。
新製品が欲しいというメッセージなのか、もう写真は辞めるというメッセージなのか、判断がつかない。
発売日が延期されなければお会い出来たのに、残念でならない。
ご冥福をお祈り致します。
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